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講義No.10432

当たり前に存在する水路を保ち、もっと身近に

老朽化する農業水利施設

 日本の水資源のおよそ7割は農業で使われています。そのため、古くからため池や水路などの、水を農地に引き込むための水利施設が作られてきました。弥生時代の集落である登呂遺跡でも、水田に水を引くための水路が発掘されています。現在、日本にある農業用の水路の総延長は約40万km、およそ地球10周分にも及びます。その大部分は戦後の高度成長期につくられたため、老朽化が深刻になっています。かつては農地が広がっていた場所が宅地開発され、住宅街に変わっている場合もありますが、残された水路は住民の憩いの場として景観上大切なものであり、水路をなくすという選択はごくまれです。

管理にドローンを活用

 既存の建造物を有効に活用し、長寿命化を図る管理手法を「ストックマネジメント」と呼びます。ストックマネジメントでは施設がどの程度痛んでいるかの現況調査が欠かせません。水路を一つひとつ目で見て水量を計測するということは困難なため、ドローンを使った撮影や測量、そのデータの解析による水路の補修計画策定が進められています。補修は単に元の状態に戻すだけではありません。つくられた当初は底も側面もコンクリートで固められていた水路を、機能を維持した上で生き物が住みやすい仕様に作り替える工事が盛んに行われています。環境に配慮した施設を求める整備が進んだからです。

「当たり前」を作る土木

 住宅街を流れる水路には、水が身近に感じられる親水機能を持たせたものも多くなっています。護岸を階段状にして水辺に近づけるようにし、飛び石を作る、景観のために並木を植えるなど、都市部では水路が公園的な機能も果たしています。水路は時に、川のような自然なものと意識されて地域に溶け込んでいます。作られたものでありながら、人々が無意識でいられ、そこにあるのが当たり前になることが、土木構造物の大切な使命です。土木は、生活に影響を及ぼすものを目に見えないようにつくり、維持していく仕事なのです。


この学問が向いているかも 水環境工学

東京農業大学
地域環境科学部 生産環境工学科 教授
岡澤 宏 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 現在はインターネットで多くの情報に出会えますが、すべての物事は当たり前ではないので、疑問を持つことはとても大事です。「なぜ?」と思うためには基礎学力が必要です。好きな科目はしっかりと勉強してください。そして、疑問を持ったらインターネットで調べて終わりにするのではなく、必ず実物を見てください。博物館や大学に行くのもいいでしょう。私の専門でいうなら、東京農業大には水の流れを横から見られる実験用水路があります。リアルな世界を体験することで、ひとつの疑問があなたの知識を広げてくれるはずです。

先生の学問へのきっかけ

 実家が長野県で農業を営んでいたため、毎年、水田に水を張る季節になると、農業用の水利施設を管理していた父に連れられて、水を引き込む様子を見に行きました。子どものころから川や農業用水はとても身近なもので、自然と、水に関する土木や農業機械に興味を持っていました。大学入学当初は農業用自動車のエンジニアリングに憧れていましたが、土壌学、水利学を学んだことで土木の分野に舵を切りました。より深く土と水を研究するために大学院へ進み、農地から出る水が川にそそぐ際に肥料が残留する問題などに取り組みました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

官公庁技術職/建設コンサルタント施設設計/建設技術職

大学アイコン
岡澤 宏 先生がいらっしゃる
東京農業大学に関心を持ったら

 東京農業大学は、地球上に生きるすべての動物・植物・微生物と向き合い、それらの未知なる可能性、人間との新たな関係を追究していく大学です。食料、環境、健康、バイオマスエネルギーをキーワードに、創立以来の教育理念「実学主義」の下、実際に役立つ学問を社会のため、地球のため、人類のために還元できる人材を養成しています。世田谷、厚木、オホーツクの3キャンパスに6学部23学科を有します。

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