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講義No.10372

海洋汚染を食い止める革新的な生分解性プラスチック

海を汚染するプラスチック

 プラスチックゴミによる海洋汚染が深刻になっています。海表のゴミの80%、海底のゴミの90%近くがプラスチックで、30年後には世界の海の中にいる魚の総重量を、プラスチックゴミの総重量が上回るといわれています。また、プラスチックは安定なため、半永久的に残り続けます。それを魚が食べ、その魚を食べた人間の体に入るという問題も生じています。こうした問題を前に、現在日本が国を挙げて取り組んでいるのが、海の中で微生物によって分解される「生分解性プラスチック」の開発です。

海中で分解させる技術

 生分解性プラスチックとは、微生物が持つ酵素によって分解され、なおかつ微生物が食べることができるプラスチックです。土壌や淡水の中で分解する生分解性プラスチックはすでに開発され使われていますが、海水の中は土や淡水に比べて微生物の数が少ないため、海中で分解することが非常に難しい点が課題です。
 しかし2013年に、海洋プラスチックにある特徴を持った微生物群が付着することがわかりました。この現象を利用して、たくさんの微生物が集まりやすくする仕組みの研究が行われています。この技術は、近い将来、生分解性プラスチックに組み込まれ、海洋でのプラスチックの生分解が実用化される見込みです。

実用性と環境保護を兼ね備えた素材

 研究のゴールはまだ先にあります。現在の技術では、生分解性プラスチックを使用している最中にその分解がはじまってしまうなど、分解するタイミングのコントロールが困難です。そこで、容器や袋として使っているうちは特性が保たれ、あるポイントで分解が進むようにするような研究が進められています。こうした技術を「スイッチング」と呼びます。これが実現すれば、実用性と環境保護への配慮を兼ね備えた夢のプラスチックが誕生するでしょう。

参考資料
1:海洋ゴミ問題を解決できる?海で分解するプラスチックの話

この学問が向いているかも 高分子化学、微生物学、分子生物学

群馬大学
理工学部 化学・生物化学科 教授
粕谷 健一 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 大学で実りのある学びができる学生や、将来研究者になる学生に共通するのは、「何かに興味をもっている」という点です。理系学部では、できれば数学や理科、英語ができるほうが望ましいのですが、仮にそれらが不得意であっても、対象への粘り強い興味があれば乗り越えることができます。興味のもち方は、一点集中型でも、広く浅くでも構いません。
 大学はあなたの興味を好きなだけ追究できる環境が整っているので、充実した大学生活を送ることができるでしょう。

先生の学問へのきっかけ

 私は、環境材料や微生物に関する研究を専門としています。もともと生き物が好きで、釣りも大好きです。大学では農学部に入り、農芸化学を学ぶ傍ら、釣りに没頭しました。そこで釣り糸がゴミになり、海の環境を汚染することから、自然環境で分解されるプラスチック素材に興味を抱き、大学院では生分解性プラスチックの大家である教授のもとで研究を続けました。現在では、深刻化する海洋汚染問題を解決するための国家レベルの研究プロジェクトに参加し、海で分解されるプラスチック素材開発の最前線で活動しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

化学メーカー研究員/トイレタリーメーカー研究員/素材メーカー研究員

大学アイコン
粕谷 健一 先生がいらっしゃる
群馬大学に関心を持ったら

 群馬大学は北関東を代表する総合大学として、優れた人材を育成し、学問の研究と応用、福祉への貢献など、社会的使命を果たすことを特色としています。「社会のニーズに配慮しつつ細分化から総合化へ」という理念を研究面、及び教育面に具体的に実現させ、「研究活動面における社会との連携及び協力」に高く評価される形となって生かされています。

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