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講義No.10104

真珠の秘密を探れ~生き物が作る鉱物結晶~

生物が作る宝石

 真珠は生物が作り出す宝石です。アコヤ貝や白蝶(しろちょう)貝などは、もともと貝殻の内側に真珠と同じような光沢の層を形成しています。これらの貝の内部に小石などの異物が入った際、貝殻の内側と同じ層が異物の周りに形成され、球体の真珠が生まれます。貝の身の外周部にある外套(がいとう)膜というひだから貝殻を作る成分が分泌されるため、異物とともに入った外套膜の一部が細胞分裂し異物を覆うことで、異物の周りに真珠層が作られるのです。日本は明治時代後期に世界に先がけて養殖による量産に成功し、現在も高品質の真珠を産出しています。

有機物と無機物の積層が輝きの秘密

 真珠の成分の約95%は無機鉱物である炭酸カルシウムで、残りの約5%は貝類が分泌する有機物です。炭酸カルシウムは地層からの鉱物としても得られ、そのほとんどは大理石などのカルサイトか、アラレ石などのアラゴナイトという結晶体です。アコヤ貝の内側の真珠層はアラゴナイトでできています。しかし、鉱物のアラゴナイトは真珠のように虹色には輝きません。真珠やアコヤ貝内側の真珠層を電子顕微鏡で観察すると、有機膜がつくるフレームの中に300ナノメートルほどのごく薄い炭酸カルシウムの扁平(へんぺい)状のプレートがレンガのように積み重なった構造をしています。積層しているそれぞれの層から光が反射することで、微妙にずれた複数の光の波が干渉し合って虹色の輝きに見えるのです。

生物を模倣した材料合成法をめざす

 アコヤ貝と同じように炭酸カルシウムを扁平状に作ることは、現在の化学の技術では大変困難です。そのため、アコヤ貝が分泌する有機物分子や遺伝子を特定し、機能を解明する研究が進められています。真珠層形成のメカニズムを解き明かせれば、真珠養殖の質の向上につながるだけでなく、新たな材料開発手法のヒントになることが期待できます。生物が鉱物結晶を作る手法を人間が模倣することで、地球環境に優しい新たな工業を生み出す可能性があるのです。


この学問が向いているかも 農学、生命科学、分析化学、生物無機化学

東京大学
農学部 生命化学工学専修(農芸化学) 准教授
鈴木 道生 先生

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先生がめざすSDGs
メッセージ

 受験勉強を頑張ることは人生の中でとても意味のある経験です。しかし、1点2点を競い、志望校に合格することだけが勉強の目標ではありません。もし志望校に入れなかったとしても、努力したことが無駄になるわけではないのです。そこまでのプロセスが大事であり、頑張って成長したことが次の結果につながります。
 人生にはたくさんの関門があり、そのときどきで自分ができるベストを尽くすことが大切です。力を出し切れたのなら、結果を気にする必要はありません。頑張った結果、身についた力を、与えられた環境で発揮しましょう。

先生の学問へのきっかけ

 小学生の頃から海の生き物が大好きで、水族館で研究者として働くことが夢でした。高校生の時、水族館は飼育が主な活動であって、研究者になるには大学に行かなければいけないと気が付きました。最先端のライフサイエンスの研究をするために、大学では天然物系の生物有機化学を専攻し、鉱物化学についても勉強しながら真珠の研究を進めました。生物が作る鉱物結晶の研究はまだあまり手が付けられていない分野です。それらの分子メカニズムを解明し、仕組みを利用して開発された材料が、世の中で使われるようになることを目指しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

食品メーカー研究開発/分析機器メーカー研究開発/化学メーカー研究開発/鉄鋼メーカー研究員/国立環境研究所研究員/産業技術総合研究所研究員

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 東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。

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