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講義No.10080

患者さんの「想い」を引き出す、作業療法士のツールとは?

患者さんの意志に合わせた作業を提供する

 作業療法では、患者さんの「やってみたい」という気持ちを引き出す動機づけがとても重要です。そのため、治療を始める前に患者さんの自己評価のツールを用いて、作業療法士と患者さんが一緒に治療目標をつくることがあります。この評価ツールは作業に必要な4つの要素を示した「人間作業モデル」を応用しており、治療の出発点となる動機づけの分析に役立ちます。

抽象的な意志を見える形に

 評価ツールには現状の能力、習慣、意志、環境に関する質問があります。例えば「体を動かす作業が可能か」と質問し、その作業の重要性や、改善したい優先順位などを尋ねます。そして最後に「その作業はどのようなものか」と問うことで、患者さんの現状と理想とのギャップを埋めるために必要な作業が明確になります。作業療法士は質問への回答をもとに面接をし、治療目標や治療へのアプローチを患者さんと一緒に決めていきます。

治療は一方通行ではない

 20世紀までは、治療の主導権は医師が握っていました。しかし21世紀からは医師と患者が歩み寄って折り合いをつけていく治療が主流となりました。患者自身が主体的に関わったものとそうでないものとでは、患者側の受け取り方が大きく異なります。
 アメリカの精神科医のアドルフ・マイヤーが提唱した考え方によると、作業療法では物(リアリティー)だけでなく、想い(アクチュアリティー)も重要だといわれています。例えば、ある認知症の患者さんはリハビリの一環で塗り絵をしましたが、その作品をなくしてしまいました。認知症では直近の記憶があいまいになります。ところが、「一生懸命取り組んだ塗り絵がある」ことは患者さんの記憶に強く結びついていました。想いを込めて取り組んだ作業は記憶や意志に影響を及ぼし、治療の効果をより高めると考えられています。ただし想いは可視化が難しいので、研究によって評価ツールなどを整備し、臨床の現場に貢献することが求められています。


この学問が向いているかも 作業療法学

東京都立大学(旧・首都大学東京)
健康福祉学部 作業療法学科 教授
石井 良和 先生

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メッセージ

 どんなことでもいいので、一生懸命取り組んでほしいと思います。私自身は進路を決めるまで回り道をしてしまいましたが、一生懸命取り組んで得た経験は、どこかで役に立つと感じています。失敗してもかまいません。自分の経験を豊かにして、ひとつでもいいので誇れるものを見つけてみましょう。いつか目標が見えたとき、その経験が力になってくれるはずです。
 また、自分をわかってくれる人がひとりでもいれば、将来なにがあってもがんばることができると思います。あなたの支えになってくれる人を大切にしましょう。

先生の学問へのきっかけ

 高校卒業後は法学部に進学しましたが、やりたいことが見つからず、しばらくバイトなどに明け暮れました。そんな生活の中、次第に「人を相手にする仕事がしたい」と思うようになり、障がいのあった知人の妹の影響もあって作業療法を学びました。
 私たちは日常の中でなんらかの作業に取り組んでいます。もし自分や環境が変化して作業ができなくなったとしても、工夫をすれば状況を改善できるかもしれません。どんな人でもあきらめなければ道が開けることに魅力を感じ、作業療法の研究を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

病院・施設の作業療法士/大学教員

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石井 良和 先生がいらっしゃる
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 東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

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