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講義No.10064

物理学で「カオス」を解き明かす

ルールがあるけれど予測は不可能

 「カオス」という言葉を聞いたことがありますか。一般的には、メチャクチャなことや、たくさん要素があって制御できない状態を意味します。しかし、物理学におけるカオスとは、「ルールがあるにもかかわらず予測不可能な振る舞いをするような現象」のことを指します。例えば、ボールを投げたときの軌跡を考えるときに使うニュートンの運動方程式にはルールがあります。ある場所からある速度でボールを投げると、必ずルールに従って、何秒後にどこに落ちるのかがわかります。しかし、実は世の中の現象の多くは、たとえ一定のルールに従っていても,初期条件を少しでも変えると、結果がまったく異なってしまい、予測することができません。

簡単な系に現れるカオス

 例えば、2つの丸い障害物があり、どちらかに当てるようにボールを転がすとします。ボールは障害物に当たりながら転がって、いずれ障害物の間から外に出ます。この場合には、最初に転がす位置や角度を変えても、どこに出るのかを簡単に予測することができます。ところが、ルールはそのままで障害物をもうひとつ増やすだけで、障害物に当たるパターンや行き先が途端に複雑になり、同じルールに従うにもかかわらず、まったく予側がつかないものになります。どんな大きなコンピュータをつかっても、たった3個の障害物の間を運動するボールの行き先を予言することはできないのです。このような現象のことを物理学ではカオスと呼んでいます。

カオスの発見

 ニュートン以来、物理学者は、運動のルールがわかりさえすれば、将来起こることをいくらでも正確に予言できると思ってきました。しかし、カオスの発見によりそれが幻想でしかないことがわかりました。さらに驚くべきは、世の中のほとんどすべての現象の中にカオスが隠れていることがわかったのが、なんと量子力学が発見されてから50年も経ってからのことだったことです。

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この学問が向いているかも 物理学

東京都立大学(現・首都大学東京)※2020年4月校名変更
理学部 物理学科 教授
首藤 啓 先生

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メッセージ

 素粒子や宇宙ばかりでなく、身の回りの現象の中にも物理学で解明されていないことがまだまだたくさんあります。高校の教科書で勉強する物理のすぐ隣りにも、実はわからないことがあふれています。学校で習う物理は、ちょっと味気なく理屈っぽいところがありますが、その向こう側にはとても豊かで好奇心をかき立てる世界が広がっています。しかし、そういうことは、教科書を眺めているだけではなかなか気がつかなかったりもします。どんな方法でも構いませんので自分自身が興味をもてる入り口を探してみてください。

先生の学問へのきっかけ

 物理学の魅力の一つは数理の言語を使って自然現象を記述することです。比較的簡単な数学を使うだけで、素朴には考えもつかないような世界が見えてきたり、思ってもいなかった現象の間に関係があることがわかったりします。中学・高校の頃から物理は好きでしたが、大学で「カオス」という言葉に好奇心を刺激されました。それまで勉強した物理とは違う何かをその言葉の響きの中に感じたからだと思います。現在は、ニュートンの力学で起こるカオスや、それが量子力学に残す痕跡などを調べています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

IT関連企業研究開発/電気メーカー開発/弁理士事務所・弁理士/官公庁職員/中学・高校教員/大学教員

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首藤 啓 先生がいらっしゃる
東京都立大学(現・首都大学東京)※2020年4月校名変更に関心を持ったら

 東京都立大学(現首都大学東京)は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

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