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講義No.09580

自由な域内市場を実現する、第3の法「EU法」

自由な経済活動を阻害するもの

 国家間で、入出国あるいは、貿易や投資などの経済活動が自由に行われているかといえば、決してそうではありません。他国に入国するときは、入国審査やビザを申請して発給してもらう必要があります。却下されれば入国はできません。また貿易では多くの場合、関税があります。これは企業にとってはコストになります。投資も外国人という理由で制限されることがあります。このようなことは、当事国にとっては重要ですが、一方で国境を越えた自由な経済活動を阻害します。

人、モノ、サービス、資本の自由移動

 欧州連合(EU)域内では、国境を越える経済活動の制限がEU法により禁止されています。つまり、EU域内では、人、モノ、サービス、資本は自由に移動することができます。しかも、EU法はEU加盟国の国内法に優先します。EU法に反する国内法があっても、EU法が適用されるのです。EU法に従わない加盟国や企業、個人には、罰金などの制裁が課されることもあります。
 一方で、普通の国家間のルールを決めている国際法には、このような強制力はありません。仮にルールを守らなくても、制裁から逃れることも可能です。そのため、紛争解決に時間がかかったり、解決されないというリスクがあるのです。

EU法は世界のルールの手本

 なぜEUでは、国境を越えた自由な経済活動を尊重するのでしょうか? ヨーロッパでは戦争で殺戮(さつりく)が繰り返されたという歴史があり、その反省から、国同士が国境を越えた経済活動を活発にすることにより、武力紛争を避ける環境を作っているのです。
 またEUは、国境を越えた自由な経済活動を実現するために、各国で異なる国内法の基準に取って代わるEU全体の統一ルールを、高度なレベルで構築しています。例えば個人情報保護や環境保護の基準は他国に比べて厳しい基準となっており、他国もそれを真似るなど、強い影響力を及ぼします。EU法は世界のルールの手本となっているのです。

参考資料
1:International law(9)domestic law and international law

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この学問が向いているかも 国際法学、EU法学

長崎大学
多文化社会学部 多文化社会学科 准教授
東 史彦 先生

先生の著書
メッセージ

 大学では、多文化社会の中で国籍の異なる市民たちがどうやったら仲よく暮らしていけるか、どうやったら世界が平和になるかを、EUや世界の事例をもとに考えています。特にEUでは、国籍の異なる市民や加盟国が戦争を繰り返さないよう、人、モノ、サービス、資本が加盟国間の国境を自由に移動できる経済領域を作り出す仕事を、国内法でも国際法でもない、「第3の法」であるEU法により行っています。
 国境を越え、平和を追求するEUには、私たちの未来があります。ぜひ私とEU法、国際法を勉強していきましょう。

先生の学問へのきっかけ

 私は、日本国総領事館派遣員としてイタリアのミラノで勤務していたことがあります。そのとき人気のイタリア車を購入しましたが、後から欠陥品であることがわかり、販売業者を訴えるべきか弁護士に相談しましたが、イタリアの裁判では最高裁で結論が出るまで10年以上かかると言われ諦めました。しかし、この出来事が法律を学ぼうというきっかけになりました。さまざまな法分野の中から、私は、当時ますますイタリアでも影響力を増してきていたEUの法であるEU法を勉強することにしました。

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東 史彦 先生がいらっしゃる
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 長崎大学は、出島を介した『勉学の地』としての誇りと『進取の精神』を受け継ぐとともに、宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が『平和』に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行います。そして、蓄積された『知』を時代や価値観を越えて継承し、人類を愛する豊かな心を育て、未来を拓く新しい科学を創造することによって、地域と国際社会の平和的発展に貢献します。

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