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講義No.09441

海藻間の生存競争によって生じる種の多様性と進化

未知の種がたくさんある海藻

 「海藻」と聞けば、多くの人はワカメや昆布をイメージするでしょうが、実際は分類群によって色や形がさまざまで、世界で1万種近くが知られています。しかし海藻の多くは単純な形をしていて、時には環境によって形が変化することもあるため、種の分類や同定が難しいのです。交雑実験やDNA分析などにより、同じ種に分類されていても遺伝的に異なる「隠れた種」がたくさんあることがわかっており、それを種として認めるべきか議論されています。新しい環境にどのように適応し、種が分化するのかなど、海藻の生物多様性を解き明かす研究が進められています。

環境に適応して生き延びる

 移動できない海藻は自分の生育に適した場所を確保するため、種間・種内で激しい生存競争を展開しています。例えば水深の浅い場所に生育する海藻は、乾燥や強い光などのストレスに耐性があるため、浅所では有利ですが、少し深いところではほかの海藻に負けてしまいます。満潮のときは海中、干潮のときは陸地となる潮間帯(ちょうかんたい)は水深によって環境が大きく変わるため、それぞれの環境に適応した海藻や動物が暮らしており、潮間帯の生物多様性は熱帯雨林に匹敵するとも言われています。生物の多様性を研究するためには、その生育環境を知ることがとても重要なのです。

海藻が繰り広げる驚きの生存競争

 生育に適した場所に根付けなかった海藻は、ほかの大きい海藻などに付着して生き延びようとする場合があります。しかし、付着される側にとっては成長の邪魔になるため、何らかの方法でほかの海藻を寄せ付けないようにしています。このような作用を「アレロパシー」と呼びますが、防御方法は種によって異なっており、未解明な点がたくさんあります。動き回れない海藻だからこそ、その環境の変化を受け入れざるを得ず、ほかの生物や海藻同士の厳しい生存競争を繰り返しながら進化を続けています。その生存戦略や進化プロセスは非常に複雑で奥が深く、知られざる海藻の世界には不思議が満ちあふれているのです。

参考資料
1:海藻研究紹介

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この学問が向いているかも 藻類学、進化生物学

東京海洋大学
海洋資源環境学部 海洋環境科学科 教授
神谷 充伸 先生

先生の著書
メッセージ

 海藻の研究にはさまざまな知識が必要です。例えば、水深による環境の違い(物理学)、フェロモン(化学)、地球史と分布とのつながり(地学)、利用できる光と光合成色素の関係(美術)など、幅広い学問分野が関わります。『万葉集』には海藻を詠んだ歌が百首近くあり、古典や歴史にもつながりがあるのです。
 高校時代には役に立つか立たないかで学問を選別するのではなく、どの学問もどこかで関連していると思って勉強してください。高校時代に幅広く興味・関心を持って学んだことは、大学で専門の研究をするときに必ず役に立つはずです。

先生の学問へのきっかけ

 高校生のときは物理化学を選択していましたが、生物を扱うテレビ番組などを見ているうちに生物学に興味を持つようになりました。大学では鳥や昆虫をこよなく愛する同級生に囲まれ、毎週のように山や海に出かけていましたが、自分にはまだ打ち込めるものが見つからずモヤモヤしていました。大学2年生のときに参加した臨海実習をきっかけに、海藻の色や形の多様性に魅せられて、趣味で海藻採集に行くようになりました。4年生になって海藻の研究室に所属し、国内外の研究者と触れあううちに、研究者をめざしたいと思うようになりました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

水産試験場種苗生産/水産課マーケティング/製薬会社品質管理/食品マーケティング・開発/児童科学館/植物園管理販売

研究室
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神谷 充伸 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

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