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講義No.09436

海に残された化学物質の「足跡」を追え!

極域で起きている酸性化

 北極海の海水成分を調べると、年々、酸性化していることがわかってきました。大気中の二酸化炭素濃度が高まることで地球温暖化が進み、北極海の海氷は大幅に融解しています。海氷は塩分を含まないので、海氷が融(と)けると海水の塩分濃度が低下します。また、氷というふたがなくなることで、大気中から二酸化炭素を吸収しやすくなり、これらの結果として、海洋の酸性化が進んだと考えられます。北極海では、貝の殻など、生物の炭酸カルシウムでできた部分が溶けてしまうほどに酸性化が進んでいることが判明しました。

化学物質を追う「海洋学」

 この事実は、実際に北極海で海水を採取して調べることで解明されました。そのような、海中の化学物質を分析する学問を、「化学海洋学」と呼びます。海に溶けている化学物質の分布を調べることで、海で何が起きているのかを知るのです。海の水は常に動いているので、そこに含まれる化学物質の濃度も変化しています。逆に言えば、化学物質の濃度変化を計測することで、海の動きを解明できるということです。

「化学トレーサー」で海水の動きを知る

 流体の動きを知るために使用される物質を「トレーサー」と呼びますが、化学海洋学においては、塩類をはじめとするさまざまな化学物質をトレーサーとして利用し、海水の動きを調べます。例えば、オゾン層を破壊するという理由で生産が禁止されているフロンガスは、生産時期が限られるので、フロンを多く含む海水は、比較的近年のものだということがわかります。海水の動きを知ることは、環境汚染の広がり方を知ること、さらには、魚など海洋生物の量や行動について把握することにもつながります。地球環境における海の役割を知る大事な手段なのです。
 海中の化学物質を調べるのは、探偵が犯人の足跡を追うのに似ています。化学物質は、足跡のように確かな証拠として海中に残っているので、その証拠を基に探偵のように謎を解いていくのが、化学海洋学の醍醐味(だいごみ)なのです。

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この学問が向いているかも 化学海洋学

東京海洋大学
海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授
川合 美千代 先生

メッセージ

 海の謎は、深海だけに存在するわけではありません。広大な海のあちこちには、いまだ多くの謎が残されています。さまざまな海に出かけて、証拠を集め、それを基に海で何が起きているのかを考えるという研究には、大変な部分もありますが、新しい発見などの楽しいこともたくさんあります。
 海の謎解きにチャレンジしてみたいなら、生物、物理、化学、地学、どんな分野でもかまわないので、得意な分野を手段にして謎解きの楽しみを味わいつつ、海の大切さ、そして今後の地球環境について一緒に考えていきましょう。

先生の学問へのきっかけ

 私は、小学生のときにテレビで見たノルウェーの風景に感動して、「北国に住みたい」と考えるようになりました。そして北国に憧れる一心で、北海道大学に進学し、水産学部に入りました。初めは、特に水産学に強い関心があったわけではありませんでしたが、4年生のときに化学海洋学に取り組むと、謎解きのような研究の面白さにひかれ、研究者への道を歩もうと決心しました。今でも、調査を行った結果、予想外のデータが出たときなどは、面白さとやりがいを感じています。

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川合 美千代 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

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