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講義No.09412

堆積物は情報の宝庫! ~当たり前に見ている風景に隠された謎~

大地震が引き起こした山岳崩壊

 東日本大震災では沿岸部を中心に大きな被害が出ましたが、山岳崩壊による土砂災害の被害はあまり起こりませんでした。しかし、発生の可能性が懸念されている南海トラフ巨大地震では、南アルプスなど中部地方の山岳地域で大崩壊が起こる危険性が指摘されています。
 過去を振り返っても、南海トラフを震源とする宝永の巨大地震(1707年)が発生した際に、静岡県と山梨県の県境に近い安倍(あべ)川の上流で大崩壊があったと考えられています。その被害規模がどのようなものだったのかを明らかにすることは、周辺自治体が今後の防災計画を考えるうえで大事なことです。

大崩壊の土砂が谷をすっぽり埋めた?

 これまでも、静岡県の安倍川上流域では、宝永地震によって崩壊した土砂で安倍川の谷が半ば埋まってしまったことがわかっていました。最近の地層の調査の結果、その崩壊はこれまでの推測よりさらに大規模で、場所によっては谷を埋めた堆積物によって尾根まで埋まってしまうほどだったこと、そのため、水流が尾根を横切って流れはじめ、「赤水の滝」という落差40m近い滝がつくられたことがわかってきました。

過去を解き明かし将来を予測する

 地球科学の一分野である堆積学は、地層を構成する砂や石ころ(レキ)、泥といった堆積物の形成過程や性質、影響などを研究します。例えば、川の流れや土石流に流されてきた石ころの多くは上流方向に傾く形でその位置に止まるため、堆積物の中の石ころの様子を丹念に調査していけば、現在とは違う川の様子が見えてきます。大地震前の河川がどのように流れていたのかを調べることによって、地震による山岳崩壊が川の流れを完全に変えてしまうぐらい大規模なものであったことがわかってきたのです。
 普段私たちが目にしている砂や石ころ(レキ)、泥などの堆積物は、情報の宝庫です。当たり前の風景がどのようにつくられたのか、過去を解き明かし、将来の予測につなげていくことも堆積学を学ぶ大きな意義と言えるでしょう。

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この学問が向いているかも 堆積学、地質学、地形学

首都大学東京
都市環境学部 地理環境学科 准教授
白井 正明 先生

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メッセージ

 科学における基礎研究は、学問がいろいろな方向に発展するための原点になるものです。私は、「ほかの人が気づかないことを見つけること」に研究の面白さを感じてきました。研究や調査は地道な作業が多いですが、毎日コツコツと歩みを続けていれば、いつのまにか「見晴らしの良い高所まで登っていた」というような瞬間が必ず訪れます。
 そのような喜びを学生にも味わってもらいたいと考えて、日々指導を行っています。あなたも科学を志向するなら、多少回り道をしても地道に自分の道を見つけていきましょう。

先生の学問へのきっかけ

 中学生の夏休みに、「プレートテクトニクス」を取り上げたNHKの特番を見たことが大きなきっかけです。海洋プレートの移動で、いつの日かハワイが日本列島にぶつかるかもしれないという話や、もともと南の海で生まれた伊豆が日本列島に衝突して半島になっていく過程などを知り、その壮大さに心躍ったことを覚えています。それをきっかけに地球科学に興味を持ち、大学では研究の楽しさを知り、大学院では研究の厳しさに直面しながらも多くを学び、今に至ります。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/地方自治体ジオパーク専門員/独立行政法人事務職/地方自治体事務職/情報関連企業技術職/建設会社技術職

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 東京都立大学(現首都大学東京)は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

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